2023.05.23
評価制度構築
役職に応じた業務や責任が不明確なままでは、組織は静かに崩れていきます。マネージャーが機能せず、部下も育たない。そんな事態を防ぐ鍵が「職務要件書」です。
「職能」とは職務を遂行する能力のことです。
通常の評価制度では、あまり使われない言葉です。私自身は、評価制度専門ではなく、組織体制の構築が専門なので、以下の内容は、評価制度を構築するコンサルタントの方からすると、理解が正しく無いかもしれません。
ただ、中堅中小企業のコンサルティングをしていると、部長と課長の違いが明示できていない、社員にキャリアステップを明示できていないなどの要望をいただく事が多いので、その解決策として「職務要件書」をご紹介させて頂きます。
問題としては、部長が、自部門のことしか考えない、営業マネージャーが自分の成果しか考えないなどです。また、社長や経営陣が正しく、役職に応じた指示を出せないということも多いです。
マネージャーとは経営者と同じ視点を持つべきだという人もいますが、社長は嬉しいかもしれませんが、言われたマネージャー側も困ってしまいます。
難しくならないように、成果責任を負わせるという形で「目標管理」で運営することも考えられますが、現場が無理に達成したり、最後の最後になって未達の報告が来たり、さらには中間管理職の負担となり離職問題や、誰もが中間管理職になりたがらないという結果が発生したりするリスクがあります。そういった事を考えると、ある程度の役職に応じた「職務要件書」が必要になります。
「職務要件書」があることで
などのメリットがあります。作り方を説明します。
難しく考える必要はなく、横軸に主任や課長、部長といった役職に応じて求める基準を設定します。(関連レポート:「部長の仕事と課長の仕事の違い」はこちら)縦軸には、その部門や課で成果を出す為に必要な機能を入れます。あまり多くすると効果が下がるので、6~10あたりが良いでしょう。
横軸と縦軸がきまったら、その基準に応じて中の文章を定めていきます。その際のポイントとしては、その部長や課長が部下に求めたい役割や能力に基づいて作成するということです。
客観的に作成しても良いのですが、中堅中小企業の場合、それを運営しなくてはなりません。そう考えると、客観的に作成するだけではなく、目の前の●●さんのキャリアステップになる、もしくは、フィードバックが想定出来る形で作成するというのも効果が期待できます。
「職務要件書」の良いところは、「評価制度」のどの部分に反映させるかを判断できる点です。単に、役職を決める為の昇格・降格に活用するという事でも良いですし、賃金テーブルと連動して本格的に導入することもできます。
お勧めは、まずはキャリアステップの提示や、昇格・降格の参考資料にするレベルでの活用です。効果が上がってきてから、評価制度に入れ込んでいうことも可能です。
注意点としては、これがあれば、部下がその通りに動くということではないという事です。マネージャー層は、これができると、部下はこの通り動くと勘違いしてしまうことがあります。しかし、今の若い社員の価値観は、高い給与は貰えなくてもよい、自分がどうしたいかが大切と考える傾向がありますので、これがあるだけでは動きません。
一人一人の社員の価値観に合わせて、今回の「職務要件書」がどういった意味があるのかをマネージャーが説明出来なくてはなりません。その為、管理職が使いやすいように作る事が大切です。ただ、管理職が効果を発揮するために自分がどう動いたらよいか、役割が見えていないということもありますので、「職務要件書」を運営する上での管理職の役割を明示した上で、使い方を伝えていくことが大切です。
職務要件書は、うまく機能したら「評価制度」に、管理職の育成につながる「管理職研修」に、若手のモチベーション向上につながる「採用やキャリアステップ」に、発展する土台にできるものですので、是非、チャレンジしてみて下さい。