COLUMN コラム

  • ホーム
  • COLUMN
  • “決めたのに動かない”はなぜ起きる?――成果につながる意思決定の条件

“決めたのに動かない”はなぜ起きる?――成果につながる意思決定の条件

2025.05.24

仕事の仕方

「決めたのに動かない」――そんな経験はありませんか?それは、意思決定が“実行される形”になっていないことが原因かもしれません。組織を動かす意思決定には、押さえておくべき条件があります。

目次

  1. “決めたのに動かない”はなぜ起きる?――成果につながる意思決定の条件
    1. はじめに:なぜ今、「意思決定」が問われるのか
    2. 意思決定の落とし穴――決めただけでは何も変わらない
    3. あなたの意思決定は、“基準”をクリアしていますか?
    4. 「実行される意思決定」に必要な3つの条件とは
    5. 変化の時代に求められる「意思決定の型」と推進力
    6. 5つのステップで考える「実行につながる意思決定」
    7. おわりに:意思決定を“組織力”に変えるために

はじめに:なぜ今、「意思決定」が問われるのか

「成果を出してほしい」。事業部長や経営層にとっては、常に付きまとうミッションです。組織のリーダーが責任を持つのは、個々の業務ではなく、全体としての成果創出。その実現のために、もっとも大きな影響を与えるのが「意思決定」です。

しかし、現実には「決めたはずなのに、動かない」「やることは明確なはずなのに、浸透しない」という悩みが絶えません。そうしたとき、私たちは“決める”という行為を過大評価してしまっているのかもしれません。

実は、「意思決定」とは単なる判断ではなく、“実行を前提としたプロセス”であるべきなのです。

意思決定の落とし穴――決めただけでは何も変わらない

「よい方向性を示したのに動かない」。それは、意思決定が“意図”で止まっている証拠です。たとえ合理的で筋の通った方針であっても、誰が・いつ・どのように動くのかが決まっていなければ、それはまだ“決定”とは言えません。

多くの現場で意思決定が形骸化するのは、この「具体化」のプロセスが抜けているからです。意図は意図でしかなく、仕事や責任として明文化されて初めて実行が動き出します。

意思決定で一番時間がかかるのは、何を決めるかではなく、「それを実行フェーズに落とし込むところ」です。にもかかわらず、私たちは“決めた段階”で安心しがちです。

あなたの意思決定は、“基準”をクリアしていますか?

意思決定をしたつもりでも、実行されず、成果が出ない。それは意思決定が、満たすべき基準に達していないからかもしれません。

果たして、自分の決断は「意思決定」と呼べるだけの水準にあるのか――。ここで一度、立ち止まって考えてみる必要があります。

「実行される意思決定」に必要な3つの条件とは

  1. 成果への仮説
    目的に対して、どのような行動が成果につながるのかという仮説を持つこと。意思決定とは、言い換えれば「この手を打てば成果が出る」という因果関係への投資です。
  2. 明確な手順と責任
    実務レベルまで落とし込み、誰が・何を・いつまでに行うかを明確にすること。属人的な判断ではなく、再現性のある行動設計が不可欠です。
  3. フィードバックの仕組み
    実行後の検証プロセスを設けること。「決めたら終わり」ではなく、「動かしてからが本番」です。

変化の時代に求められる「意思決定の型」と推進力

市場環境の変化は年々スピードを増しています。事業の前提が数年単位ではなく、数カ月単位で変わるような中で、「正確に決める」以上に、「速く、かつ実行可能なかたちで決める」ことが求められています。

このような状況下で意思決定の質とスピードを両立させるために重要なのが、“型”を持つことです。意思決定の型があることで、複雑な判断を構造的に整理し、限られた情報と時間の中でも前に進めることができます。また、型があるからこそ、実行しながらの見直しや、フィードバックによる軌道修正も可能になります。

一方で、意思決定には「パワー」も必要です。これは単に方針を定めるだけではありません。誰が、どのように進め、どのタイミングで確認・修正を行うのか。その全体設計まで責任を持って決め切る力が必要です。

特に、目の前の業務に忙殺されがちな現場では、短絡的な判断や“先送り”が横行しやすくなります。だからこそ、実行を前提とした意思決定を行うには、「時間を確保して考え抜く力」と「関係者を巻き込み、組織として動かす力」が不可欠です。

5つのステップで考える「実行につながる意思決定」

  1. 問題の種類を知る
    再発型か、構造的なものか、一時的な事象か。問題の性質により意思決定のアプローチは異なる。
  2. 必要条件を明確にする
    制約条件・関係者・達成すべき指標など、「判断の枠組み」を定義する。
  3. 何が正しいかを知る
    意思や感覚ではなく、事実とデータに基づいた判断軸を持つ。
  4. 行動に変える
    手順・役割・期日を具体的に落とし込む。組織で実行される状態を設計する。
  5. フィードバックを行う
    モニタリングと振り返りの仕組みを作り、実行の精度とスピードを高める。

おわりに:意思決定を“組織力”に変えるために

意思決定とは、単なる選択行為ではなく、「成果創出に向けた実行プロセスの出発点」です。

決める力が属人化していると、組織の成長は頭打ちになります。一方、意思決定が仕組み化され、型として共有されていれば、組織の誰もが状況に応じて決断し、行動できるようになります。

成果を出す組織には、「動かせる意思決定」があり、そのための文化と仕組みが存在しています。今、自分の意思決定は動いているか。実行されているか――。

“決めて終わり”にしない意思決定を、あなたの組織に。