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属人化を超える“営業の型”──ベンチマーキングでつくる仕組みとチーム力

2025.05.30

営業力向上

優れた営業担当者のやり方を組織で再現する──それが、成果を仕組みに変える「社内ベンチマーキング」の力です。属人的な営業から脱却し、チームとして成果を出す営業組織へ。その鍵を握るのが“型づくり”と“仕組み化”です。

目次

  1. 1. ベンチマーキングの本質を知る
    1. 「ベンチマーキング」とは何か──語源と本来の意味
    2. なぜ今、社内ベンチマーキングが有効なのか
    3. 営業成果を最大化するための「型」の重要性
  2. 2. 社内ベンチマーキングを活用した営業の型づくり
    1. 営業活動を「構造化」する──共通言語の整備
    2. ベストプラクティスの発見と展開
    3. 再現性を高める「場」と「仕組み」の整備
    4. チームでつくる営業力──仕組みを回す組織作り
    5. 仮説検証・振り返りが生む持続的成長

1. ベンチマーキングの本質を知る

1-1. 「ベンチマーキング」とは何か──語源と本来の意味

「ベンチマーキング(Benchmarking)」という言葉の由来は、測量などで使われる“基準点(Benchmark)”にあります。これは地形の高さや位置を測る際の参照点であり、ビジネスにおいては「比較すべき基準」として用いられます。

つまり、「比較すべき基準」をもとに、他社や他部門、他者の優れた取り組みを参照し、自社の改善に活かす活動のことを指します。「社外ベンチマーキング」は他社比較、「社内ベンチマーキング」は自社内の優良事例を起点とした改善活動と整理できます。

1-2. なぜ今、社内ベンチマーキングが有効なのか

昨今の営業活動は、属人化のリスクが高まっています。成果を出す人と出せない人の差が大きくなり、ノウハウが個人に閉じたままになる傾向が強まっています。

その中で注目されているのが、社内ベンチマーキング、言い換えると社内の「ベストプラクティス」を起点にした型化と展開です。外部比較ではなく、自社内にある成功のエッセンスを抽出することで、実行可能性が高く、組織内に浸透しやすい展開ができます。

1-3. 社内ベンチマーキングの効果UPにつながる「型」の重要性

営業活動における「型」とは、業務プロセスや行動の順番、タイミング、使う資料や質問項目などを定義し、標準化することを指します。

「型」があることで、新人もすぐに成果に近づく活動ができ、また熟練者も振り返りによってさらに高みを目指すことが可能になります。属人的な成功から脱却し、チームとしての再現性を高めるには「型化」は不可欠です。

「型」があることで、より一層「社内ベンチマーキング」の効果が期待できます。

2. 社内ベンチマーキングを活用した営業の型づくり

2-1. 営業活動を「構造化」する──共通言語の整備

まず取り組むべきは、営業活動の構造化です。たとえば、以下のような業務プロセスを定義します。

  • アポイント取得
  • ヒアリング
  • 提案
  • クロージング

これらのプロセスを社内で共通言語化し、それぞれのフェーズで「どのような成果が望ましいか」「何を聞き取るか」「どの資料を使うか」などを整理していきます。

2-2. ベストプラクティスの発見と展開

次に、現場で成果を出している営業担当者の行動を細かく観察・ヒアリングし、「なぜうまくいっているのか」を分析します。その上で、他のメンバーでも実行可能な形に落とし込み、「型」としてマニュアルやテンプレートに整理。具体的なトーク例やツールの使い方、報告の仕方などを明文化し、全体に共有します。

2-3. 再現性を高める「場」と「仕組み」の整備

型化した内容を活用し続けるには、「場」と「仕組み」の整備が必要です。たとえば:

  • ワークショップでベスト事例を共有
  • セールス機能表で個々の行動と成果を可視化
  • SFAに型に基づいた入力項目を設定

こうした仕組みがあることで、現場が動きやすくなり、型の活用が日常業務に根付いていきます。また、個人の改善ではなく、全体としての改善となることで、一人ひとりの取り組みに対してのコミットメントも高めることができます。

2-4. チームでつくる営業力──仕組みを回す組織作り

仕組みを回し続けるには、マネジメント側の役割が重要です。型の運用が「管理にならない」よう、成果につながる目的とセットで浸透させます。

また、メンバー同士が互いの成功事例に関心を持ち、コメントし合えるような心理的安全性も必要です。営業会議や1on1で「型を活かした行動ができたか」を振り返る仕組みを取り入れるのも効果的です。

特に、中間管理職が忙しい中で、先輩やリーダー社員が新人や若手社員のメンター的な存在として設定するのは非常に効果が期待できます。ただし、会社の状況によっては、それをルールとして設定して運営する指示を出さないと動かないことがあります。

メンバーの主体性は仕組みを回す中で導き出しますが、その仕組み自体はある程度、会社側でルール化してしまう方が経験上、良いです。

2-5. 仮説検証・振り返りが生む持続的成長

最後に、型づくりの終点は“完成”ではなく“進化”です。型を活用した結果、どのような成果が出たかを振り返り、次の改善へとつなげていきます。

特に、失注案件や苦戦事例を素材にした振り返りは非常に有効です。仮説を立て、それに基づいた行動をとり、結果を分析する。この流れが文化として根付けば、営業組織全体が継続的に学習するチームへと変わっていきます。

おわりに

社内にある“隠れた成功”を見える化し、型として展開していく社内ベンチマーキングの考え方は、営業組織の変革において極めて重要です。

成果を出す営業の共通点を見出し、再現性ある形で整備し、仕組みとして運用する──このサイクルが、個人力に頼らずとも成果を上げ続けるチームを育てていきます。