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ナレッジは“業務フロー”に埋め込め——活用される共有の条件

2025.05.29

ナレッジマネジメント

「ナレッジを共有する仕組みを作ったのに、活用されない」「共有しようとしても手間がかかる」——。そんな声が現場で聞こえることはありませんか?ナレッジマネジメントは、仕組みだけではうまく回りません。本コラムでは、ナレッジ共有の“壁”を乗り越えるための現場視点と、仕組みとして埋め込むための2つのポイントをご紹介します。

目次

  1. ナレッジマネジメントのポイント ~業務フローにナレッジマネジメントを組み込む~
    1. 共有する側、共有される側の双方の壁をどう解決するか
    2. 「業務フロー」と「共通言語」が情報共有の壁をこえる

1-1. 共有する側、共有される側の双方の壁をどう解決するか

「良い取り組みを社内で共有したい」という意識は多くの企業にあります。しかし現実には、ナレッジ共有が思うように進まないことが少なくありません。ある企業では、各部門から事例を集め、内容を精査し、個人情報を消し、カテゴリ別に分類して社内ナレッジシステムで共有していました。一見すると素晴らしい仕組みですが、運用の手間が非常に大きく、関係者の負担は重くなりがちです。

「精査してから共有する」のではなく、「まず共有し、あとで必要な情報を探す」という考え方もひとつの選択肢です。実際、あるエンタープライズサーチの会社では、社内のファイルやデータベースから横断的に情報を探し出せる仕組みを整えています。この会社が実施した調査では、「情報共有が進まない理由」として最も多かった回答が「検索ワードが思いつかない」というものでした。つまり、共有する側の“手間”と、受け取る側の“探しづらさ”という、両側の課題がボトルネックになっているのです。

ナレッジマネジメントの本質は、この「共有する側・される側」双方の壁をどう乗り越えるかにあります。片方の視点だけで仕組みを作っても、定着はしません。両者の負担と行動を設計することが鍵になります。

1-2. 「業務フロー」と「共通言語」が情報共有の壁をこえる

共有の壁を乗り越えるために有効なのが、「業務フロー」と「共通言語」の整備です。ナレッジを“業務の流れ”に乗せ、“共通の言葉”で整理することで、共有と活用が自然に行える仕組みが作れます。たとえば、「顧客から相談されるポジションを築く」ことが営業活動の一部だとした場合、そのステップに「相談ポジション獲得」といった名称をつけて定義します。これが共通言語となります。

そして、「相談ポジション獲得」の場面で有効だった事例や資料を、関連フォルダやタグの中にまとめておく。このようにすることで、共有する側は業務フローに沿ってナレッジを分類でき、活用する側も「今の業務フェーズに必要な情報」を探しやすくなります。

重要なのは、業務のどの場面で・どんな目的でナレッジが必要かを可視化すること。ツールやシステムの前に、業務フローと共通言語という“土台”をつくることが、ナレッジが活きる組織づくりの第一歩になります。

ナレッジマネジメントは、「情報を共有する仕組み」ではなく、「行動の中に情報を埋め込む仕組み」です。業務に沿った形でナレッジを設計することが、定着と活用の鍵になります。

おわりに

ナレッジ共有は仕組みだけでは回りません。大事なのは、共有する側とされる側、双方の負担と行動を踏まえて設計することです。そして、それを業務フローと共通言語に落とし込むことで、初めて現場で活かされる仕組みになります。

「共有されない」「活用されない」と悩む前に、まずはナレッジを使う“場面”と“言葉”を整理してみてください。それだけでも、ナレッジマネジメントは一歩前進します。